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AUGUST 1998 から抜粋 text by Hiroyoshi Kobayashi |
歌やドラマ、映画で活躍する人を、マルチタレントと呼ぶなら、片桐さんも立場こそ違え、多彩 な才能を発揮するマルチタレントである。若いタレントの育成から、映画音楽、ミュージカル、ライブなどの作詞・訳詞、さらには歌唱指導と、まさに八面 六臂の活躍。華奢な体のどこに、そのバイタリティがあるのか驚きである。 「苦労して作詞・訳詞を完成し、歌い手さんが書いた内容以上に表現してくれ、感動してくれたときの喜びがあるから、がんばれるのでしょうね。たとえば梓みちよさんのために書いた『リリー・マルレーン』という詞。彼女はこれを読んで涙が出て、トイレから一時間も出てこれなかった。それを聞いたとき““やった”と思いましたよ。 そのマルチタレントぶりを駆け足で紹介すると・・ 1965年、渡辺プロの東京音楽学院で高橋摩梨子、布施明、辺見マリ、ジャニーズ、フォーリーブスらのタレント育成を手始めにビートルズ、シカゴ、レターメンらの外国曲の訳詞、『ガラスの部屋』『ライオンキング』といった映画音楽の作詞・訳詞、さらには『メリーポピンズ』『熊のプーさん』など、ビデオの作詞・訳詞といった具合。 いやいや、まだある。団塊の世代にはなつかしいヒット曲『あこがれ』『ナオミの夢』や、テレビドラマ『必殺仕置人』の主題歌『旅愁』を作詞したのも片桐さん。我々がなにげなく口ずさんでいた流行歌は、片桐さんのタレント(才能)によって作られていたのだ。 今、情熱的に取り組んでいるのが、明治生命ミュージカル『アニー』と、ボランティアによる老人ホームへの訪問である。 ご存知のの人も多いだろうが、『アニー』は世界恐慌直後の1933年のニューヨークを舞台にしたミュージカル。孤児院で暮らす女の子・アニーが自分を捨てた両親を捜すために、様々な出来事に遭遇するというストーリーである。その『アニー』が13年前に日本で上演されて以来、翻訳・訳詞と歌唱指導をしている。 「縁の下の力持ちでやらせていただいています。『アニー』以来、歌や舞台を通 して子供たちと交流でき、とても幸せです。アニーの卒業生も384人いますが、未だに私を慕ってレッスンに通ってくる子供たちもいますし・・」 実は老人ホームの訪問も『アニー』がきっかけだという。歌が大好きな子供でも、全員がミュージカルに出られるわけではない。ならばボランティアで歌って踊って、お年寄りに楽しんでもらおう、というわけである。 「あるホームで所長さんが、いろんな方が慰問にきてくれるが、お年寄りは疲れると席を立ち、帰ってしまうこともある、と言うんです。そこでステージを30分にまとめ、誰でも知っている歌のミュージカルにしたのです。ステージが終わり、子供たちが、また来ます、風邪をひかないでね、と声をかけてあげますと、お年寄りはいつまでも帰らない。理由を聞きますと、楽しかったから、もう一回やってほしい、と。私は子供たちに、どうする?と問いましたら、子供たちは歌いたい!と言ってくれましてね。もうワンステージ、今度は一緒にお手玉 やあや取りをして・・。子供の目は輝き、お年寄りには感激されて、こんなに喜んでもらえるなら、もっともっとやりましょう、ということになったんです。 『アニー』が取り持った子供とお年寄りとの温かい交流。そして訳詞・作詞では「いつまでも心に残る歌詞を」と願う片桐さん。多くの人々に豊かさを贈り、その満足感で笑みがこぼれる片桐さんを見ていたら、オフタイムの話はどうでもよくなった。 |
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